君の一番






金曜日の夜。
俺はいつもみたく恋人の風介の部屋にいた。
といっても風介は今、本を読んでいて俺のことを相手にしてくれないけどな。

「……なあ、風介」
「なんだ」

目線は本に落としたまま風介は返事をする。

「もし、俺が誰かに殺されたらどうする?」

風介はやっと本から目線をあげて俺を見た。
珍しく驚いているみたいだ。
ま、そりゃそうだよな。いきなりこんなこときかれりゃ、俺だって驚く。

「どうしたんだ、いきなり…」
「いや、今日の社会の授業でやったんだ」

俺と風介は学校は同じだけとクラスは違う。
だからもちろん授業内容も違う。
んで、今日の社会の時間。
教科担任が投げかけてきた質問………

【大切な人の命がうばわれたらどうしますか】

大切な人……もちろん、風介。
風介が殺されたら、なんて考えたくなかったけど。

「君はどうするんだ、晴矢」

どうするか、なんて、決まってる。

「もちろん殺した犯人を殺しにいく。決まってんだろ」
「そうか」
「で、お前は?」
「私は……」

風介は顎に手を当て考えてるみたいだ。
しばらくしてから風介はゆっくりと口を開いた。
どういう答えをするのか。想像つかないな。

「わからない」
「は?」
「どうするかわからない、と言っているんだ」
「な…なんだよ、それ!」

わかんねぇってなんだよ!
もっとこう…犯人を殺す、とか一緒に死ぬ、とか俺の分も生きる、とかないのかよ!
これじゃ、まるで…………

「俺、お前にとってどうでもいいってことかよ…」
「?」
「わかんねぇなんて言われたら、俺のこと、どうでもいいみたいじゃねーか……」

俺は風介が死んだら絶対犯人を許さないし、殺してやりたくなる。
それが普通だろ。個人差はあるとしても、わからない、なんてありえないだろ。
なのに………
やっぱり風介は俺のことなんて、どうでもいいのか…?

「違うんだ、晴矢。確かにわからないが、どうでもいいということではないんだ」

風介を見ると珍しく困ってるみたいだった。
でもどうでもいいわけじゃないって…どういうことだ……?

「晴矢がいないなんて考えたくないし、考えられないよ」
「……え」
「だって私達、今までずっと一緒にいたじゃないか。だからいきなり晴矢がいなくなったら、と言われても想像できないんだ。そのときの私の思いも、行動も」
「風介……」
「だって、これまで生きてきた中で君が一番私の近くにいるんだから」
「…………!」

それって。
今までの出会った人の中で、俺が一番…ってことだよな。
父さんよりも。ヒロトよりも。瞳子さんよりも。
…ダイヤモンドダストの仲間よりも。
俺が。
風介の一番近くにいる……。

「やべ。すっげーうれしい」

風介の一番近くにいるのが俺。
それがすごくうれしくて。

「へへっ」
「………何をにやけてる。気持ち悪いぞ」
「え、マジ?」

顔がにやけるくらい許してほしい。
それくらい嬉しいんだ。
普段「好き」とか「そばにいたい」とか言わなくて、ほんとに俺のこと好きなのかって言いたくなるようなお前の。
無自覚な愛情表現。


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かなり前にノートに書いた南涼やっと書けました!
南涼ほんとかわいいです。
晴矢は直球で好き、とか愛してるとか風介にたくさん言うけど、
風介は淡白で好きも何も言わない。
それで晴矢はいつもちょっと不安に思ってたり……
そんな二人をイメージして書いてみました!
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