居場所
雷の大きな音が鳴り響く。
橋の下で一人、蹲って耳をふさぐ。
それでも、頭の中ではまだ声が響いてる。
≪吹雪!今日もエターナルブリザード決めてくれよ!≫
皆が必要なのはストライカーとしての僕。【アツヤ】としての、僕。
僕は、【シロウ】は必要ない…?
≪お前はもう必要ない≫
【アツヤ】もいらないの?
じゃあ、僕はどうすればいいの…?
≪そんなに一人で完璧になりたいのなら一人でやっていればいい≫
一人は…一人は嫌だよ…っ。
おいて…いかないで……!
どんなに思っても、どんなに叫んでも誰もわかってくれなくて。
キャプテンとか、チームの皆とか、僕のこと気にしてくれて、ちゃんと考えてくれてる、なんてことわかってる。でも……
僕の本当の思いはわからない。
僕も、もうどうしたらいいのかわからないよ………
「必要とされたい。でも完璧じゃない僕は必要ない……。一人は…嫌、なのにっ」
「なら私のチームに来ないか」
「…!?」
驚いて顔をあげるとどしゃ降りの雨の中にダイヤモンドダストのキャプテン、ガゼルくんがいた。
今はチーム、ザ・カオスのメンバーだったよね…。
「何でここに…」
立ち上がり彼を見据える。
一歩ずつ、僕の方へ近づいてきた。
反射的に僕は少しずつ、後ろへと後ずさる。
「そんなに警戒しなくてもいい。今日は別に何かをしようと来たわけではない」
「……」
その言葉を聞いてもまだ信用するわけにはいかない。
だって彼らは僕たちの敵で。
たくさんの仲間が傷つけられてきたんだから。
それからしばらくの沈黙。
本当に彼は僕に何もする気が無いみたいだ。
「……さっきの言葉、ひきぬき…ってこと、だよね?」
僕は恐る恐る口を開いた。
「ああ」
「どうして……」
「君の力が、必要だからだ」
「僕の…力……?」
僕の力が必要。
彼は確かにそう言った。
すごく驚いたけど……
少しだけ、嬉しい、と思ってしまった自分もいたんだ。
「それは…どっちの僕かな……」
別に、チームに入る気になったわけじゃない。
だって彼らは敵チームだし。
ただ少し、興味があっただけ。どっちを選ぶのか。
【アツヤ】と【シロウ】。
ストライカーとディフェンダー。
どうせ【アツヤ】だろうと思うけれど。
「どっちもだ」
「え…」
「私は君の力が必要なんだ。例え二つの人格があったとしてもそれがどちらも君の中にあるのなら、それは君だろう。どちらの力も、私は必要なんだ」
そう、彼は迷うことなく言った。
それは今まで誰も言ってくれなかった言葉。
そして、僕が一番言ってもらいたかった言葉。
僕の心の中で何かが崩れる音がした。
頬に何か冷たいものが伝う。
「もう一度言う。吹雪士郎、君の力が必要だ。私達と一緒に戦ってくれないか」
そう言ってガゼルくんは僕に向かって手を差し出した。
僕の答えはもう決まっていた。
雷門イレブンだとか、敵チームだとか、そんなことはもう僕の頭の中にはなくて。
ただ、僕を必要としてくれる人がいた。僕を僕としてみてくれる人がいた。
それだけで嬉しくて。
僕は差し出されたその手をとった。
その手をとれば、もう今までの場所には戻れないとわかっていたけれど……
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吹雪闇落ちです♪
アニメを見て思い付いたんですけどよく考えたら時間軸おかしいですね……
この話はカオス戦前のつもりで書いたんですけど…
ほんとは吹雪が橋の下で「一人は嫌だよ」って叫んでるのはカオス戦のあとでしたw
とりあえずブリザード組かわいいですv
完全に私の趣味丸出しですねwごめんなさいw
何かご感想などありましたら、ぜひ♪