ズル休み〜釣り組編〜
いつも俺のことを元気にしてくれるあの人の笑顔が大好きで…
俺の中にいつの間にかめばえたこの感情。
それが恋だって気付いたのはいつのことだっただろう………
「もう皆来てるんでしょうか」
少し早足で部室へ向かう。
今日は日直で少し遅くなってしまったからもう皆来ているかもしれません。
部室の前につくとゆっくりと部室の自動ドアが開いた。
「〜♪」
聞こえてくる鼻歌。
俺の予想とは裏腹に部室の中には一人しかいなかった。
「浜野君。一人ですか?珍しいですね」
そこにいたのは俺の片思い中の彼。
「そーそー。皆どっか行ったんだよなー」
「どっかって…」
いい加減すぎないですか…。
もうすぐ次の試合もあるっていうのに大丈夫なんでしょうか?
俺達は勝ち続けなきゃいけないのに…。
「…だいじょーぶだって。みんなちゃんと考えてるよ。そんな心配することなくね?」
「え…」
なんでわかったんですか…。
彼を見るとにっと笑っていた。
「そう、ですね…。えっと、皆なんでどっか行っちゃったんです?」
「ん?3年の三国さんっちは面談だってさ」
「受験ですもんね。大変そうです。一年生の人達は?」
「西園と狩谷は用事だって。剣城はさっき天馬がさらってった」
「さらってったって…」
天馬くんと剣城くんは仲が良い。
恋人…みたいな雰囲気だなってたまに感じます。
「倉間君は?」
「南沢先輩とデートだって」
「へぇ…。キャプテンと霧野くんは?」
「その二人もデートっぽかった。ちゅーかデート率高すぎじゃね?」
「そうですね」
浜野君が少し拗ねたような口ぶりで言う。
はっきり言ってこのサッカー部内でのカップル率は相当高い。
神童くんと霧野くん、倉間くんと南沢先輩。天馬くんと剣城くんももしかしたらそうかもしれないって考えるとほんとに、相当高いです。
俺も、浜野君と恋人になってデートしたい…です……。
そんなこと、絶対に本人にはいえないけれど。
「いいなー。俺もデートしたいー!」
「俺と、デートします?」
「へ?」
「………あ、う、う、嘘!今の、嘘です!!忘れて、下さいっ」
な、なに言ってるんですか俺!
『おれとデートします?』って絶対ひかれるにきまってるじゃないですかっ!
ああ…なんで行っちゃったんでしょう!
確かに思ってましたけど、思ってましたけど…!!
言うつもりなんて、なかったのに…。
浜野君もやっぱり何にも言わないし…。どうしよう!
やっぱり嫌われてしまったでしょうか…。好きだということが、ばれてしまったでしょうか……?
「速水」
「は、はいっ」
思わず声が裏返る。
う…浜野君、いつになく真剣な気がするのは気のせいでしょうか。
いや、でもあんなことを言ったのだから……
「速水!」
「は、はいぃっ」
「ほら、行こう!」
「…え?」
「だから、デート!一緒に行こう!」
「デー…ト……」
浜野君の口からでた、予想外の言葉。
信じられない、です。
デート、浜野君と、いけるんですか…?
「ほら、速水から言ったんだろ〜?行かねーの?」
「い、行きます!行きます…けど……」
「ん?」
「ほんとに、良いんですか。俺とデートなんかして……」
男同士なのに。
そういって浜野君を見ると驚いたような顔をしてすぐにぶっとふきだした。
「なっ!!」
「ぷっやっぱ速水おもしろいわ!」
「は、浜野君っ…!」
「はー…。ごめんごめん。俺、速水とだからデート行きたいっちゅーか…」
「っ!」
それって……。
うぬぼれても、良いんですか?
君が俺のこと好きだと思ってくれてる…そう思っても、いいんですか?
「だからさ…デートしよう、速水!」
「…はいっ!」
もしかしたら…
一生届かないと思ってた俺のこの想い……
君に届く日は、近いのかもしれないです…っ!